「道行き」「足あと」「根っこ」という言葉が好きだ。
特にここ1〜2年、モノもヒトも高速で移り気であることに、どうしても納得できなくなった。
年のはじめ、山に登りながら(疲れて家族にぶーぶー文句いいながらも)、実は右脳で楽しく大好きな「道行き」という言葉を考えていた。そしてこれからは、その意ををゆっくり考えたいという希望をあらためて持った。
そんなとき、この展の「北へ向かう旅、二人が撮った写真と道行き」という紹介文を見て、激しく胸がドキドキした。
高鳴る気持ちを少し平静に保つためにも、アイヌ文化を私より学んだ15の青年を連れてさっそく出かけた。これからたくさん経験するだろう旅、モノやヒトとの出会い。爆発するくらいドキドキしてほしい。そのためには、ぜひとも「道ゆき」を大事にし続けて欲しいと願った。
『ここより北へ』 石川直樹+奈良美智
大好きな「道行き」の意を成した展示だった。
二人は、多くを語らないふりして、文化、民族、歴史をあらゆる手法で、あらゆる言葉で残してくれた。静かなエネルギッシュ。これこそ私のイメージする「道行き」。
アイヌの「先人の手あと」というタイトルで綴るそれは、「古き良きを周到するばかりでなく、発見や学びで受け継ぐ」という修行のような言葉で私をノックアウトした。そして、私も青年も、オタスの杜に心が到着したときには、とうとう写真、空間にのめり込んで会話が消えていた。「道行き」は百聞は一見に如かず。
そのアイヌ文化は粗略に学ぶことはできないし、分かったふりをしてはいけない。ジワジワと後から想いが湧き上がる展示だ。何回も足を運べるチケット制度を導入しているワタリウムでの開催は、このような意味でも大正解だ。
(2015.1.25-5.10まで ワタリウム美術館)