長ネギのさきっちょからまあるいボールが出現した。こいつは「ネギ坊主」だ。前記事の「ネギ」つながりでひとつ記事をかこう。
特別オーダーが入っていたりで、秋の展覧会の準備が遅れている。「だれか時間をゆずってください」「24時間制作だけさせてください」とか、終いには意味不明な「どうにかしてください」と一人喜劇。しかしながら心は図々しくなったものだ。泣いたって誰もふりむかないし、同情なんていらないから時間をくれ!と相手のない憤慨と滑稽なひとりごと。怒ったってナンセンス。感情をおもてに出すならば、すべてを土に込めるのだ。(しかし上質な眠りが不得意なわたしは寝言で暴言化するのだから末恐ろしい。みなさまお気をつけて!)
こんなふうに慌ただしい春の終わりが続いているけれど、野菜が美味しい季節なので心は折れない。
長ネギのさきっちょについたまあるいのは、ネギの「花房」。薄いピンク色のオーガンジーベールを脱いでいる途中で、なんて艶やかなんだろう。あまりに美しく、器に入れて飾ることにした。
ベールを脱げば、うわぁ!250~400の花が集まっている。
ひとつの可能性があれば無数の種をまくことができる。可能性がひとつでもあるのならば、時間がなくともやるしかない。可能性があるのなら、小さな花を見落とすな。そのかわり可能性を雑に扱うな、丁寧にていねいに毎日を剥ぐのだぞ。そんなふうに小さな坊主に叱咤激励された。
その名は、ネギ坊主。
9月末の展覧会の前に「旅する土鍋 vol.4」は7月末イタリアに出発。ひとつの可能性をにぎりしめ。