我が家の庭には、あしなが蜂が毎年帰省なさる。ツバメは「福をもたらす」と喜ばれるものだが、蜂は真逆で[危険をもたらす」ものとされる。しかし、両者ともに≪この場所を選びました≫と言われているのは同じで、それゆえに、なんとなくウェルカム感で微笑んでしまうのだ。
この数年は、小さな巣をみつけては殺虫剤と棒で駆除したものだが、駆除してもすぐにまた庭のどこかに巣をつくる。今年はどうするか。どこからか湧くように蜂が大発生する時季があるので拠点がどこだか探す必要があるのだが、今年の巣は、早い時季に、毎朝、桑の実とりをするすぐ近くに発見された。すでにある程度の完成した巣を、毎日辛抱づよく抱えるように守っている写真のあしなが蜂かあさん。
こんな姿を毎日みてしまうと、これから羽化するだろう子どもたちを駆除することができなくなってしまった。
あしなが蜂は「女王蜂」一匹で巣作りと子育てをするといわれている。毎年帰省なさるようになってから調べたら、彼らには驚くべき生態があった。結論からいうと女系社会。
一匹の「女王蜂」が最初に生む子どもはすべて娘(メス)であり、これらを「働き蜂」(卵巣未発達で生まれ交尾をしないメスらしい)と呼ぶ。母子家庭の一家は巣を増築し、整ったところでワンシーズンで一匹だけ子々孫々のために「女王蜂」を、数匹だけ「オス蜂」を生む。「オス蜂」は交尾という役目を果たしたら命を終える。大多数の「働き蜂」も越冬せず寒中で死を待つのだとか。冬眠できるのは交尾済みの「女王蜂」のみ。ああ切ない…。
そこから考えると、5月の連休少し前に庭にぶんぶんとやってくるのは冬眠から覚めた唯一の妊婦「女王蜂」。こんなことを知ってしまったから、どうも駆除できなくなってしまった。ここから彼女の巣作りから子育てが始まるのだ。労働形態を示す言葉であり、近ごろでは育児に対しても使われている「ワンオペ」(ワンオペレーション)という言葉は、この女王蜂こそまさに適正ワード。しかし辛抱の甲斐あり、生まれたすべての娘は母を助ける「働き蜂」となるわけだ。姉たちは一匹の妹「新女王蜂」のために尽くということか。これまた切ない…。
そんな子孫繁栄ストーリーを考えながら巣を観察していると、あれ?きょうは巣に母親にそっくりなもう一匹の蜂が巣を守っているじゃないの。しかも交代で飛んでどこかに行ってる。「働き蜂」はもっとずんぐりむっくりだと読んだが…。「働き蜂」の前に「女王蜂」が生まれるの?このかたどなた?
ええ?それとも父親つきの「新あしなが蜂 理想的家族のかたち」?