#1, #2 より続きです。
1月に鑑賞したものの中から、記録に留めるべくイベントや鑑賞したものをまとめます。
●「谷川俊太郎 展」東京オペラシティギャラリ
最初の空間では、何度も音読した「ことばあそびうた」など名作からいくつかの詩がポップアップされる。小山田圭吾(コーネリアス)の音楽とインターフェイスデザイナー中村勇吾(Tha
Its.)の映像で心臓の鼓動のようなリズムと一緒に詩が現れる演出。親として「かっぱかっぱらった」を毎日くり返し読んだころの感情や「ビリー・ザ・キッド」を読んで死と生をくちびるで感じた多感な自身の青春時代。時代が両方から湧き上がりぐぐっときた展でした。
ふたつめの会場には詩の柱が塔のようにそびえたつ。おおお!と驚くべき偉人や作家たちとの書簡には感動。書簡の文面と送り主を照らし合わせ、だいぶ長い時間読んでいました。(写真左)
また柱には、マジックでラフに書かれたメモ切れのようなものが貼ってあり、これは谷川氏がレセプション前日に会場で即効で書いたものだそうで、こういう素朴なのだけれどスパイスの効いた作品と展示手法はさすがだと感服。
「言葉に揉まれながら暮らしてきましたから(谷川俊太郎 掲載詩より)」(写真左)
「自分には飽きる 他人のほうが面白い(即効で書かれた氏のテキストより)」(写真中央)
●デビッドリンチ「版画展」8/ ART GALLERY/Tomio Koyama Gallery
版画展は映画のあとに観ることをおすすめしますが、時間と場所の関係により先に鑑賞しました。1991年東高美術館でのデビッドリンチ展のキュレータの一員に8/ARTの小山氏もいらっしゃったわけで、当時の作品から受けた衝撃という記憶がジェットコースターのごとく版画を観ながらぐるぐる回り。
91年の展覧会でリンチ本人に会い握手をしてもらったこと。そしてサイン本を思い出し、なつかしくページをめくりました。当時のチケットもはさんでありました。その後、2012年ラフォーレ原宿ミュージアムでの展示も良かったけれど、わたしにとってはあの25年以上前のデビッドリンチ展で人生に良い意味でのひびが入ったといっても過言ではないでしょう。
●デビッドリンチ「アートライフ」アップリンク渋谷
“わたしの席”と呼ぶイスが空いていたら観にいく。誰にも言っていないけれど自分自身で静かな決め事がある映画館での上映。ここで上映してくれるなんてなんと嬉しい!
リンチ幼少時代の家族との思い出から、高校時代から美大時代のアトリエや作品のこと。思う以上に裕福で幸せな幼少期を過ごしてきた彼の心は青年期に爆発、いやラフレシアのように不気味だけれど美しい花を咲かせたのではと感じました。
絵やインスタレーションから80年代の映像作品「アルファベット」「グランマザー」や「イレイザーヘッド」まで彼の想念を解説。「母はわたしにぬりえを与えなかった」「父には家庭を持つこと子育てすることはお前には向いていないと言われた」など、リンチの親には期待と迷いがあったにちがいない。(※ぬりえに興味がなかった我が子にはも買ったことはありませんが決して期待ではなく節約とズボラからです)
リンチの美大時代からの暴走により、両親の期待は「失望したわ」という母のため息あたりから離れてゆく。わたし自身が美大時代に暴走したことから、親の気持ちよりリンチの気持ちがわかるようなドキュメンタリーでした。そんなことからなのかな、途中で不意打ちの感涙などもあり、もはや再見したい作品。
※日本語バージョンPVは派手なディレイと音量に嫌気がさしたのであえて伊語字幕バージョンで。