フィレンツェのアパートやB&B、アグリツーリズモの情報を提供し、アシストしてくれるLa
Casa Miaを主宰する奥村千穂さん。これまでに数冊の本を出していらっしゃるのですが、きょうは先ほど届いたばかりの最新本「美しいフィレンツェとトスカーナの小さな街へ」(文・写真
奥村千穂/イカロス出版)のご紹介。
ヨーロッパ屈指の観光地フィレンツェ。これまでにもたくさんのガイドブックは出版されているし、この本も一種のガイドブック。ただ、目線が違うのです。歩いて歩いて、晴れ晴れとした声で街の人とおしゃべりして、パクパクとおいしく食べて、ゆきちゃん(ご息女)が小さかった頃はおそらく手をつなぎゆっくりと、時にワンコに会えば石畳にしゃがみ。そんな彼女が書いたガイドブック。
本来は街から郊外までトスカーナを広く深く周知している彼女ですが、この本は決してマニアックなエリアを紹介されているわけではありません。ですが、冒頭でいったとおり目線が違うのです。千穂さんのかわいらしい性格と、濃いけれどダラダラと駄文にならないキュキュッとしまった文字の羅列は、彼女のブログ同様とても読みやすい!
Trattoria “il guscio” Firenze /photo tamamiazuma
千穂さんも本の中でご紹介されているトラットリア「イル・グッショ」。当時わたしが作品をつくらせてもらっていた陶彫刻工房の近くで、本の中で、千穂さんはこのトラットリアに“”職人が集まる小さなトラットリア”と見出しをつけています。去年の夏、うだるような酷暑のなか、ふたりでこのエリアにあった工房を探し歩き、もう干上がる!というところで入った千穂さんお薦めのトラットリアでした。左からふたりでシェアした「ズッキーニの花のフライ」、千穂さんが食べた「ローストビーフ」、わたしが食べた「スズキの熟成カルパッチョ」(たしか…)です。とってもおいしかったし、この数時間後すぐに重い重い土鍋入りの荷物で移動も元気にできたのでした。
かつてわたしがフィレンツェに住んだ頃は、生の情報を入手(伝える)する「手立て」がなく、ケータイはしかりPCを持っている人もおらず、電話でさえ、街角の公衆電話や電話センターにかけに行っていました。街の情報は、ノートとペンを持ってとにかく歩き、街の人と話していろいろなことを教えてもらうしかなく。写メなんかもないし、情報を記録する「手立て」もなくて、とっても重い一眼レフを持って歩いたものでした。
千穂さんの本の内容は、まさに足で歩いた目線の情報であり、コツコツと積み上げた情報です。胃袋のセンスもバツグンな千穂さんの「おいしい紹介」や美学・美術史を学んだ彼女の「芸術紹介」は特筆すべき読みどころ。ぜひぜひご一読あれ。