窯づめの準備は9割できたのに、どうしても乾き切らない作品がひとつあって窯をたくことができません。右往左往しながら窯に入れてしまおうかと強行突破も考えましたが、焦る気持ちをおさえて出かけることにしました。せっかくの春のはじまりですものね。
週に1度はかならず通って定点観測する場所が大騒ぎな季節。まずは心を整えて散歩です。同じ場所がちがう顔にみえるほど華やかです。殺風景な体育館が祝いの場所になったあの感じに似ています。仰げば尊しです。
すっかり日本の春の祝いを堪能したあと、作品は乾いたかなぁと焦りは頭をかすめましたが、友人の展覧会に行くべきだ!そう思い立ち、サンドウィッチと珈琲ではらごしらえを済ませて、ぐんぐんさらに散歩を進めました。90年代フィレンツェで唯一通った語学学校で出会った友人カメラマン。神戸の震災直後に渡伊したというその理由にも当時ノックアウトされた記憶があり、それはそれは互いにタマゴだった。
本当に行ってよかった。エントランスから順にみていって、まだ1/4くらいのところでしょうか。ある写真でふと涙があふれてきました。写真からすぅーっと風が流れてきたからです。テーブルの上のグラスや料理は静かにとまっています。それなのに誰が肩をたたいたの?まったく泣かせるような写真でもかなしいストーリーでもないのに。
彼のスタジオには6年ぶりの再訪だろうか。スタジオをゆずりうけたというおはなしをあの時にうかがったのですが、不思議な時間というのはあるもので、誰かに肩をたたかれたような一瞬があり、そのあと心密かにそのお会いしたかったそのご家族と会うことができました。
ようやく心のなかの焦りが消えました。すてきな作品展でした。
そして、被写体である和歌山のレストランVilla AIDAに行ってみたくなりました。