アイルランドに住む友人がお土産に持ってきてくれた陶芸家コーンの庭のルバーブ。前編では「ルバーブのスープ」、中編では「ルバーブ入りホットヨーグルトスープ」をご紹介しましたが、この後編では「ヨーグルトのトッピングにドライルバーブ」を。
ルバーブとセロリやフキはともに豊富な繊維質を持つ野菜。形状も似ていますが、ルバーブだけは水溶性繊維質であるため、温めるとあっというまに溶けるのです。前中編ではその面白さを活かした温かいスープを。さて後編は、溶かさずいただきましょう。
スライスしてちょっと酸っぱいサラダのトッピングにするのも好いですが、このところ爽やかな風が吹き湿度の低い晴天が続いたので、ルバーブを薄く斜めにスライスして天日干しにしました。1日であっという間にカラッとします。ルバーブの表皮は濃いピンク色のままでかわいらしいヨーグルトのトッピングのできあがり。
(下写真:ドライルバーブ、夏みかんドライピール、庭のマルベリ、丹波の絞り黒豆、ぶどうなど)
「陶芸家コーンとアイルランドの風ものがたり」は最終回です。お時間許せば、おつきあいください。
氷のように低温な手で冷ややかな挨拶をしてしまったなぁと後悔しながら、陽が落ちかけて急に冷えてきたコーンの工房でぶるぶる震えていた。この冷気はアイルランドにうようよしている妖精にまぶたを閉じろと命令されて森に連れて行かれたのか、それとも北アイルランドにもう冬が到来したのか。
コーンは「どれでも作品をプレゼントするよ選びなさいな」とどこまでも温かい。空を飛ぶことを忘れた旅鳥は大きな宇宙船型の花器を選んだ。なんとかなるわとまた妖精がささやくのだもの。寒いので部屋に移ろうと皆で工房の扉を閉めて住まいの扉を開けた。コーンと友人のエンダはすぐに暖炉に泥炭(※)をくべる。草と土の香りがして、すぐに濃い夕陽色の炎が大きくなってゆく。薪のように賑やかでなく静かに燃える火は、アイルランドの国の人々を映しているようだった。
お礼に、コッチョリーノの「タネさんプロジェクト」のタネさんに顔を描いてもらいプレゼント。プロジェクトの主旨を説明すると、コーンは一気に陶芸家の顔からかわいらしいおじいちゃまの顔になり。今でも、あの優しいのに芯があるタネさんの顔は、泥炭の炎のやさしさと重なって陶芸魂として燃えている。(完)
(※)泥炭(ピート)暖炉に使われる燃料のひとつ。泥炭地から採る天然燃料でスモーキーな香り。スコッチウィスキーをつくる過程で麦芽を乾燥させる時にも使われる。物語の冒頭にも書いた独特の国土の香りは泥炭なのかもしれない。
追記:
コーンの家を出てクルマから見たノックナリー山。山頂に見える小さな突起は先史時代の古墳の塚。ケルト神話に出てくる女王メイヴの墓であるそうだ。まさしくこの空の色こそ泥炭が燃える夕陽色。女神の山に幕をおろすのは太陽であり、この大地は暖炉の火が消えるのと同じくらいさらに冷え込むのだろう。最後まで「アイルランドの風ものがたり」におつきあいくださりありがとうございました。
⇒「アイルランドの風ものがたり」(物語だけをまとめたページ)
⇒「ルバーブとアイルランドの風」(前編:ルバーブスープ)
⇒「ルバーブとアイルランドの風」(中編:ルバーブ入りホットヨーグルト)
⇒「アイルランドの風ものがたり」(ものがたりのみ)
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