蓋をして蒸し煮するスープに土鍋は最適。
調理中の土鍋の本体にいい色がつく。ニンジンの糖分がカラメル化して、オリーブオイルの油分がディープな芳ばしさを残す。これらが炭化すると焦げに至るが、このちょっと手前の風味が土鍋につけば味が増す。
レシピではさらに加熱するところを、土鍋の場合は火を消す。それでも土鍋の「ごちそうサウンド」である「ことこと」が数分つづき、土と芳ばしい香りが余熱というあそびでで調理される。これが土鍋のたのしさであり魔法なのかもしれない。
有賀さんいわく「つい加えたくなる、うまみや香りいろどりなどの、ちょっとひと手間より、簡素なレシピをめざした」とあるが、今回はニンニクを微量、ディルを添えた。それは、わたしの嗜好によるものであり、以下にその理由を少しつづって、有賀さんの新刊「スープ・レッスン」の紹介に代えさせてもらおうと思う。
読みごたえ、つくり甲斐のある本なのでぜひ。
子どもが生まれてから19年近く、わがやのスープ(または汁物)頻度は高い。
幼いころからしっかり食べ、毎日スポーツにいそしむ少年がいたので、粗食でもガッツリ腹もちの良い食事をつくった。玄米を15年間つづけていることや、スープ(汁物)をつくる理由もそんなことから。幼~高校までの毎日のお弁当も、お腹を満たすためのスープ(スープジャー)は必須だった。そんなこんなで、我が家のスープ(汁物)率は高い。そして、幼稚園のころから今でも彼の好物は「おみそしる」である。毎日がなんちゃって母さんだが、それはちょっとうれしい。
その裏には、若いころスープを敬遠していたわたしがいたのも事実で。
お酒を飲むのが好きなわたしは、おつまみのような食事が好きだった。思えば子どものころからそう。アルコールの合間にいただくスープがどうしても苦手で、通せば胃袋がガブガブになった。
子どもと食事をするようになり、家族と食事や時間の足並みを合せたり、夕食後も工房に入ることが増えてからは晩酌は仕事の後になり、ようやくスープ(汁物)がうれしい環境に変わったのだと思うが。今でも、どちらかというと「おかず的なスープ」を好む。「葡萄酒に合うかも!」「日本酒といけるかも!」というスープ(汁物)を狙っているような、そんなヒミツみたいな好みが実はあることを告白しながら。
よき秋の夜をスープと、時には葡萄酒をお供に過ごそう。
INFORMATION
我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM(Ginza Tokyo)
2018年11月16日~24日
※21日休廊
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F