下の写真は、10年使いつづけているコッチョリーノ初代の土鍋。当時、2年のトライアルを経て、使用の安全性を確認したのち、個展で発表した想いのつまった一品。初代は線にも迷いがあったなぁ。それよりなにより、我が家でよく育ってくれているなぁとしみじみする。
ヘッダー写真にあるように、イタリアでは、薪窯に直接入れて使ってくれている家庭もあるので、それはそれは見事に育っていてうれしい。
最初のひとすじの焦げは「汚れ」として気になるものだが、だんだんと重なるグランジっぷりは、使い手の作品となる。つくり手は、きれいなままの器より、その人が映し出される器をみると、泣きたくなるほどうれしくなるのだ。
土鍋は、煮込むだけでなく、炒めることもできる。
今回は、もっとも敬遠される「焦げ」を恐れるなかれ、あめ色たまねぎからつくるスープを、炒めることから加水してスープに煮込むまで、土鍋ひとつでつくってみた。
下の写真、左から「①あめ色に炒める」⇒「②加水して完成」⇒「③洗浄後」である。
洗浄すれば、ご覧のとおり8割方の焦げは落ちる。なんせ10年使い続けている土鍋なので、③の写真は、経年的な汚れを含めてのものであるが、ひとつ今回の調理で取れなかったのが、釉薬のかかっていないふちの部分の汚れ。これを「名誉ある焦げあと」とあえて呼びたい。
Cocciorinoのツイッターにて、スープ作家の有賀薫さんよりご質問いただいた。
「育った鍋でつくるスープは新品の鍋とは味がちがうのだろうか」@kaorun6 ⇒@cocciorino
Cocciorinoのお答えは以下のとおり。
「作家として、まずは「愛着」を持ってもらうこと。革の靴、財布のようなもので、クセを知れば料理も楽しくなる。味覚としては、洗わない伊エスプレッソマシーンにも近いような。油がしみこみ美味、こびりつきにくく、かつ丈夫になると実感していますが、料理のプロではないので検証の余地なし」
※当記事はnote「ちょっとブレイク 土鍋を育てる」書き下ろしたもの
INFORMATION
我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM(Ginza Tokyo)
2018年11月16日~24日
※21日休廊
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F