ピンとはった綱を歩くピエロのように、いや緊張感をもって鼻先を上流にむけて泳ぐ鮭のように。とにもかくにも個展まで1ヶ月。陶芸は「完成」まであらゆる工程があり、仕上がりを逆算しながら進む。
こんな体制でシゴトをしていること、そしてみずから旅する身であるからこそ、半ば旅の途中「秋鮭」に、深く手をあわせ「いただきます」と言いたくなるのだ。
必死で川をのぼり産卵し、生まれた稚魚は大海原に旅に出る。数年間の回遊を追え、親になるために生まれた川に海から戻ってくるというミステリーな生態。そこで捕らえられたのが「秋鮭」。
秋鮭は「白鮭」とも呼ばれ、もともと白い身は、エビやカニなどの甲殻類を食べて赤くなっているそうだ。海に充満する栄養をカラダにしみこませ、川に戻ってきたところを人間が、上流にたどりついたところを熊などの哺乳類や鳥や昆虫やらが。そして、それら生き物は山に栄養をはこぶ。
「旅人」である作家は、わが身が赤くなるまでいっぱいおいしい経験を食べ満足し、その身を誰かがおいしいおいしいと食べればいい。そして工房コッチョリーノの「旅する土鍋」は海のようなもの。土鍋にたくさんの栄養を盛り、川に、山にたくさんの栄養をはこぶプロジェクトなのだ。
いまは「秋鮭」と同じで産卵のとき。一ヶ月をきった個展まで、一心不乱に川を遡上している。
① 鮭の切り身に白をこすりつけ、酒に数時間つけておく。
②洗った米に入れて炊くだけ。
③この日は大根の葉っぱがあったので刻んで添えた。
※酢飯にしてシソと白ゴマをちらしてお寿司にしてもよい。
お気軽におこしくださいませ!
ギャラリーにてお待ちしております。
INFORMATION
我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition
Ecru+HM(Ginza Tokyo)
2018年11月16日~24日
※21日休廊
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F