先日のワークショップで「なぜ丸い形なのですか?」というような質問をいただきました。
土鍋をつくりはじめて10年以上が経過したいま、つくり手自身、常套的(じょうとうてき)になっていたデザインのこと。改めてお話しする機械になり、初心に戻ることができました。
今回の個展でも、ベーシックな3合土鍋も並ぶ予定です。
「まるいカーブ」
直火があたる底面から、ゆるやかに丸いカーブを描いた形。
炊飯においては、カーブに沿って対流が起こり米粒がおどることでデンプン質の糊化(α化)が平均的に起こると言われており、羽釜の形がその理由です。炎が本体をなめるように広がるので、煮込み料理などもやさしく均一に加熱されます。
手でつくるものなので、このカーブに型はありません。
世界でひとつの形であり、それが愛嬌。この愛嬌が、計算しつくされたプロダクト製品とのちがいであり、良くも悪くも、だから手のしごとには失敗があるのです。
「まるいふた」
アラビア語で「鍋」を意するモロッコのタジン。三角帽子のアレです。大きなふたは、収納的にネックになるので、本体とのバランスを考えて、少し膨らんだまるい形です。水蒸気の循環効果もあり、食材がパサつきません。ドーム型で面積を広げた遠赤外線も期待できます。※参照:遠赤外線協会
「小さなあな」
小さなあながふたのつまみ(家/山)にあります。
頂点の空気穴は、視覚化することで蒸気やけど防止、そして物理的には、平均的な対流を期待しました。炊飯などは、密封して圧力をかけるほうがおいしいと言われますが、先にも書いたとおり、プロダクト製品ではなく手のつくりです。穴がなくても空気は多少もれますし、温度や水分を逃すほどではありません。土の重量は、おいしく空気を包むような実感があります。
穴があることで、沸騰やスチームがはじまったことを蒸気で知らせます。吹きこぼれ防止にもなります。そして、なにより、鍋のアイコンである家や山から出る蒸気は、エンターテイメントであり、ほっとする効果さえあるような気がします。
「包容するふくらみ」
あふれる量の食材を詰めても、ふたができます。
例えば、白菜と豚肉のミルフィーユに、あふれるほどのもやしをトッピングしてもふたが閉まります。パンを焼くときも、いい感じにふくらむ余地を持っています。
そして、最後にご紹介する「土鍋まるごとロールキャベツ」もつくれます。
キャベツを巻く手間もなく、ケーキのように切り分けて食べることができます。残ったらトマトソースを足してスープにしてもよし。我が家のお気に入りです。
(ゆっくり火が通る/保温効果があるなど土素材の魅力については後日)
キャベツ1個
豚ひき肉 500g
おからパウダー30g
牛乳 少々
トマトピューレ(350cc)
コショウ、ナツメグ 少々
コンソメ1/4個
塩 適量
▶︎つくりかた 料理に関してはプロではありませんので、あしからず。
使用した土鍋は「土鍋3合サイズ/黒」です。
個展に展示される数には限りがありますので、ご了承ください。
「はるの いのち」我妻珠美 陶展
2020年 2月8日(土)〜 16日(日)
11:00〜19:00
*月曜定休(11日祝日は営業)
CROCO ART FACTORY
横浜市中区元町 1-71 メゾン元町2F
045-664-4078