晩秋から冬に変わりましたね。
ブロッコリーの芯と、ひよこ豆の余りと、ほんの数センチだけ残ったベーコンがあったので、ジャガイモと玉ねぎを足して、あたたかい野菜のスープに。トマト缶を加えてくつくつ煮ていると、冬だというのに、あの日のアマルフィの熱い風をふいに思い出しました。
たまには、コッチョリーノでないうつわもご紹介しましょう。
ナポリのアマルフィ海岸沿いを南東に行ったところに、ヴィエトリ・スル・マーレ(地図)という陶器の町があります。海の上のガラスという意味の名がついた、陶工房がたくさんある小さな町。今や観光地であり、陶器としては「ザ・イタリア土産」といった印象かな。風光明媚な町のあちこちに、陶タイルやオブジェが置いてあり、店先には庶民のうつわからアーティスティックなものまで並んでいて、日本でいうと有田や伊万里の町に似ています。
何度もこの町を訪れたことのあるイタリア人のルイーザとスザンナとわたしの3人は、クルマでわいわい出向いたわけですが、断崖絶壁の町にたどり着くまでに、何度も大きな観光バスとすれ違い。これにハラハラしていたのはどうやら私だけだったようで。
町の店先には同じような絵柄のうつわが並びます。
友人が買ったことあるという工房に入り、赤で青のポイントが入ったニワトリ絵のうつわを選びました。「重いから1つか2つしか買えないな」というと、友人らは「送っちゃいなよ!」とあおり、店主はいい調子でそれに乗り「アメリカや日本にナンドーモ送ったことあるからダイジョーブ!」と鼻を天井に向ける。「わたし陶芸家なんで逆に聞きたいんだけど、日本からイタリアに送って割れなかったためしがない」と話すと、「ダイジョーブ割れたことなんてないっちゃっ」みたいなことをいうので、信じた。いや、胸騒ぎはしたけれど、信じました。
「じゃあスープボウルとディナープレートを同じ柄で6枚ずつ」と、そこにいた職人に言うと、「マカセトケー窯で焼いたら送るよ」と、満面の笑みで、大変うれしそう。そのわりに1ヶ月後、帰国すると、まだ荷物は届いていなくて、ハラハラとワクワクでその到着を待ちました。
ある日、大きな段ボールが届きましたが、なんだか嫌な予感がして、開封前、開封中、開封後と、写真を撮りました。ああ、予想通りというか、予想以上に、大皿はすべてわれ、ボウルもいくつか割れていました。あああああ〜。すぐに工房に写真を添えてメールをしたけれど、返事はなく。あと1週間、いや2週間待って返事なかったら電話するぞと思っていた頃、もうひと箱、届きました。中身は、注文通りの数。「もう一箱、届きましたけど」とメールすると「弁償だ、割れた品は送り返さなくていい」とのこと。
もう一回、あの町に行ける日が来るといいな。
金継ぎをして一枚持って行こうかな。
ありがとう。また会える日まで。