「世界のスープ図鑑」佐藤政人 著 (誠文堂新光社)。
佐藤氏は、昨秋の出版後、写真展が開催されている期間に来日され、土鍋のワークショップにもご参加くださいました。まさか、そのあと、こんな世界になるなんて思ってもいなかったわけで。遠い昔のように切なくなる胸を押さえながら、早く世界が開かれますうようにと、この1年間でもっともページをめくったレシピ本かもしれません。つくれなさそうなメニュがあっても、最初から最後まで読んだし、気が向いたら何度もページをパラパラとランダムにも読みました。
図鑑と題するだけあって、厚みが3センチもありますが、ペタンとページが寝る綴じ目になっており、読めば読むほどページごとにきれいに開きます。数冊、贈り物にもしました。手にとった人たちは声を揃えて「図鑑みたいでうれしい」(タイトル図鑑よ!)と抱きかかえます。そして、本棚の一番いいところに置こう!なんて言ってくれます。
スープ「カルド・ヴェルデ」(温かいグリーン)は、簡単という理由が一番なのですが、もう本を見ないでもつくれるようになりました。食材の切り方や量、水分や塩の量も適当です。それでもできてしまう。それが家庭のマンマの味(郷土料理)なのかもしれません。
本来の材料「コラードグリーン(葉物)」は手に入らないので、店頭でケールを見つけると、このスープをつくろう!と思うのです。ほか、チョリソーが要となるのですが、アイルランドの塩豚やイタリアのスペック(ベーコン)、そしてこのレシピに出てくるチョリソー(腸詰)などは、見つけられても高価。出費を覚悟すればなんでも手に入る、やろうと思えばつくれる日本ですが、家庭料理をサッとつくるのに、それはないなあと思っているので、ちょっとだけ良さそうな粗挽きソーセージで代用。永遠に本場の味が再現できないけれど、これも、心おどる「夢みるメニュ」の醍醐味なのです。
隅から隅まで読める料理本が好きです。
料理を主役にして展開される物語的なレシピや紀行が好きなのです。
「時短だ」「便利だ」「楽ちん」みたいな現実だけのものより、たとえ自身がつくれなくても、いつかつくりたい「夢みるメニュ」と、これならつくれる「現実メニュ」が交差している料理本は奥深い。夢は読み、現実はつくる。料理本というのは、著者のお人柄も香るのですよね。
▶︎今週は「利他と料理」土井善晴・中島岳志(ミシマ社)と「世界の台所探検」岡根谷実里 著(青幻舎)を一気読みしました。▶︎窯たきが迫っていたので、工房で仕事しながら読破。▶︎後者はタイトルの通り世界の台所をめぐる話とちょっとしたレシピ付き。泣かせる物語でも切ない旅物語でもないのですが、90年代を過ごしたイタリアの台所から、2013年から毎年イタリアをまわった「旅する土鍋」の台所が走馬灯のように頭をめぐり、寒い工房で鼻と目がジーンと熱くなりました。この中から何か料理をつくったら、感想を少し添えようかと思います。▶︎さて、休憩時間終わりです。工房に戻ります。