窯の不調について少し前にお知らせしておりましたが、今回は趣向を凝らした作品展示のおしらせと、これからのあゆみについてご報告いたします。
コッチョリーノの窯は、200ボルト仕様の電気窯で重量1トンくらい。2000年の7月台風一過、クレーンから吊るされた窯は空を舞い降りてきました。オーライオーライと場所を指示しながら、腕のなかで8ヶ月の子がその光景をキラキラした目で見ていたのを思い出します。
この数年、窯の不調がつづきました。
人間と同じように窯にも寿命があるのです。
ハラハラと花が散るのを恐れていたら良い風が吹いても迎え入れられないし、窯の不調を嘆いても窯は成就しないなと思いながら騙しだまし窯を焚いてきました。通常は、窯を交換すれば良いのです。しかし周囲の住宅環境が変わり、窯の搬出入が困難な状況になっていました。窯を解体して運び出し、新たに搬入するにも現場で組み立てるしかありません。
私自身の「道」も、雑然と木々が茂り、枯葉がだいぶ積もりました。大木は木陰を生み、落ち葉は良質な堆肥となり。充実した証でもありますが「道」というものは、時に間伐して陽を取り入れ、貯めた堆肥を活かし、新しい生命を芽吹かせねばなりません。
そこで、陶芸活動を一時的に休止し、窯の新調を試みようと決心しました。
大学時代から陶芸をはじめてイタリア弟子時代を経て36年。東京に独立工房を持ってから22年。苦行はたくさんありましたが、最終的には、仕事と暮らしが両立した賑やかな「道」ができました。ここまで「道」を伸ばしてくださったギャラリーや関係者の方々、光を照らしてくださったお客さまには大いなる感謝を申し上げます。復帰までどのくらい時間がかかるのかわかりませんので、陶芸展の企画については、ギャラリー各位にご放念いただきました。
この先の予定は、まだアナウンスできませんが、固定概念にとらわれず、執着を手放し、積み上げてきたものを解放しようという決心がかたまりました。コッチョリーノの種に多くの方が水を撒いてくれたおかげで芽が出て花も咲きました。これからは、おいしい水をみんなで分け合えるような日々でありたい。そんなことを本気に目指して歩いています。
「道」 我妻珠美 陶展
2022年4月16日(土)-24(日)
休止前の区切りとして、横浜元町クロコアートファクトリーが、コッチョリーノのささやかな足跡《そくせきき》を楽しめるような展覧会「道」を開催してくださることになりました。懐かしい作品群や、実験や試作で終わってしまいアイテム化されなかったような作品など、工房に秘蔵していたうつわが並びます。土鍋や新作はありませんが、22年の「道」を散歩するように楽しんで辿ってくだされば幸いです。
イタリア修行以降、隠れ模様としてみなさまのコッチョリーノ作品に刻んできた「足あと」と「根っこ」は、次ステージへの『道』につなげるための伏線であったのかなと。
休止の期間は、次の構想に身を奮い立たせながら、折にふれてつづってきた心の短文「道草」や「まいにち土鍋」などの料理と生活日記をつづけていきたいと思っています。もし忘れないでいてくださったら、数年後、またどこかでお会いしましょう。どんなうつわが、どんな土鍋が生まれるかどうぞ楽しみにしていてください。
さしあたっては、企画してくださるギャラリーのCROCO letterにお目を通してくだされば嬉しいです。
在廊日は決まっておりませんが、最新情報についてはこちらのTOPページやSNSにてお知らせできたらと考えています。ダイレクトメッセージにて沢山のお問い合わせをありがとうございます。個人様宛のお返事が追いつかないので、ブログのコメント欄を公開します。
コッチョリーノ我妻珠美
2022年3月18日
コメントをお書きください
あやこ (土曜日, 19 3月 2022 11:42)
いつか娘と一緒に初めてお会いした日のこと、今でも思い出します。
これからもずっと大好きです!
コッチョリーノ (土曜日, 19 3月 2022 15:49)
あやこさま
わたしもよく覚えています、きっとあやこさん。
才能を活かされて正直に進まれる姿、わたしも大好きです。
Haruka (土曜日, 19 3月 2022 19:29)
2000年7月ですか!ウチの下の子と同い年(月も一緒)なんですね。
人が1人生まれて成人する以上の歳月を珠美さんと共に過ごしてくれた窯なんですねぇ。
お疲れ様でしたと声を掛けたい気持ちになります。
先日、社会人生活が丸2年になろうかという上の子がひとり暮らしを始めて、実家ではほぼ何もしなかった子が朝夕のごはんにお弁当まで作るようになっていて、ここにきてまた成長していることに驚かされています。
せっかく料理を楽しむようになったなら、いずれコッチョリーノをプレゼントしたいな…なんて思っていたところでした。
直近では実現しなくなりますが、のんびり復帰されるのを待っていようと思います。
長々と失礼しました。
コッチョリーノ (日曜日, 20 3月 2022 11:14)
Harukaさま
「成人した窯」同年同月にお生まれなんですね!Harukaさんを支えてきたお子さま。あっという間の年月されど喜怒哀楽がつまった年月あって成人されたと思うとジンとしますよね。分かってくださったことに大変感激しています。
お弁当をつくるHarukaさんの背中を(いやおそらく真っ正面から!)見ていたからこそ、やる時はだれよりも料理や生きること楽しんでいらっしゃるのですね。そんなすてきな方々のためにも、コッチョリーノは窯や制作の場を復活させたい!とモチベーションが上がります。Harukaさんからの勇敢になれる花束、大切にします。ありがとうございます。
銭々0 (月曜日, 27 6月 2022 05:04)
こんにちは。銭です。
私にとって、コッチョリーノさんとの出会いは大きいものでした
いろんなことに感動し、気付かされたこと多々です。そして、私は趣味ですがアクセサリーというものとこれからも歩んでいけることを真摯に受け止めたところです
わたしにとっての命?というか、私の分身なんです。とても大切なものたちを私は生み出すことができるのだということを知った昨日。これからどうしていくのは分かりませんが、自分に嘘をつくことだけはしたくない。
売れようが売れなかろうが、自分。愛でていくことに変わりはありません。
猪突猛進ではないように、しばし自分の気持ちを次のステップまで休み、自然体の自分を受け止めてあげたいと思っています。お互いに素晴らしい人生を歩めますように。