両親ともに東京に生まれて育ったため、自然に恵まれた故郷はありません。新興住宅地で育ちましたが、あの頃、幸いにもまだ残っていた草むらや田んぼ、牧場のにおいを嗅ぐのが好きでした。
数年前に父が旅立ち、つい先日、一人で暮らすことがままならなくなった母は温かい方々がたくさんいる施設に移り住みました。そんなこともあり、実家に向かう機会がこのところ多くなり、懐かしい場所がどんどん開発されていることを知りました。
青春期は、椎名一枝さんの「自転車いっぱい花かごにして」という本が好きでなんども読み、野草のお話が聞きたくてファンレターを書いた記憶もあります。美大生だったけど、生物学で扱う植物の授業が楽しみで、授業中は日本タンポポと西洋タンポポの絵ばかり描いていました。
92年から99年までのイタリア滞在理由はいくつかあって。ひとつは、陶芸の弟子に就くことでしたが、ほかにはアルテポーヴェラ(芸術運動)というプリミティブな作品(石、土、植物などの自然物を未加工のまま使う)が好きだったのも理由のひとつでした。自然の草や花に触れられる第二の故郷が欲しかったのかもしれませんね。野草を食べたりお茶にしたり、石鹸や軟膏をつくったり、蒸留してエッセンスをつくったり、修道院の野草酒をこよなく愛したり。実際、トスカーナ、エミリア・ロマーニャ、マルケ、カラブリア、リグーリアなどでその生活に触れることができました。
イタリアの古書屋をまわって、野草の本を買ったことも思い出されます。そこ挟んで押し花にしましたが、あるとき全部ボロボロになって朽ち落ち、消えていきました。
トライしてみたいこと、想いを寄せたい分野もたくさんあるのに、不器用ゆえに一心不乱でした。窯の不調、母の不調などなどすべてが重なった時期ですが、心を整えて、窯の移築を考え始めています。諸々のことを解決しながらでないと進めず、ご報告までにまだ時間がかかりそうですが、人生第二の道を開拓しようと思っています。
まずは、あの想いを叶えるため、野草に近づくことです。それと、自然界と人間の詩的な関係・プロセスを探求する作家ジュセッペ・ぺノーネ(アルテ・ポーヴェラ運動に携わった作家)の精神をふたたび心で追いかけたいと思っています。
※追悼:アルテポーヴェラ名付けの親ジェルマーノ チェラント氏は惜しくも2020年悪しヴァイルスで亡くなった。
第一歩として、ある薬草講座に参加しました。
これまでに各種の薬草講座を調べましたが、どれも、どこかが引っかかり、心のブレーキがかかってしまっていたのです。哲学や思想が入り込むので、中身が薄そうだったり、指導者がむだに空騒ぎしているようなタイプだと尻込みしてしまい、けっきょくイタリア生活で触れた野草の経験は日々薄まり、帰国後20年間、勇気をもって入り込むことができませんでした。
ついに、信用できる友人が企画する講座に参加して、その道に最初の一歩だけ近づくことができました。知的でフットワーク輝く友人と有能な先生に感謝するとともに、わたしの第二の道にあかりが小さく灯った瞬間でした。その講座に持ち寄ったのがヘッダー写真の「よもぎのグリーンカレー」です。タイのグリーンカレーをベースに、東京の庭のよもぎをふんだんに使って、オリジナルにアレンジしてみました。最後に、想いを煮込んだカレーのレシピ載せておきますね。
A
■ヨモギ(ザルに山盛り)
■ピーマン1個
■アンチョビ(オイル漬け5〜6枚)
■アンチョビ(チューブ)
■ニンニク2かけら
■生姜2かけら(大きめ)
B
□タケノコ(水煮1袋/細切り)
□鶏胸肉1 枚(米粉をまぶす)
□シメジ(白or茶1株)
□ココナッツミルク2缶
□塩
□砂糖
□レモングラス(レモンバーム)
■A
①鍋に湯をわかしヨモギをさっと茹で、フードプロセッサーが回りやすいよう適当に切る。
②ニンニクとショウガ(半分)をすりおろし、残りのショウガは千切り。
③ピーマンは種を取り小さく切る。
④Aの材料すべてをフードプロセッサー(orミキサー)に入れ、回転させるために水を少し入れて粉砕する。
□B
①土鍋に油をひき、Aのペーストを炒め、水分を飛ばす。
②タケノコ、シメジを加えて炒める。
③ココナッツミルクを注ぎ、砂糖と塩で味を調整する。
④塩と米粉をまぶした鶏肉を投入し、お肉に火が通るまで弱火で煮る。
(トッピングに、レモンバーム、ルーコラの花を添えました)